ランチェスター法則による1位作りの地域戦略営業簿記の実行が営業マンの利益意識を大きく変える
マーケティングや営業戦略と比べると、地味で目立たないのが地域戦略です。営業の本を読んでも地域戦略はほとんど出てきません。ところが市場占有率1位の地域を作ると利益性がとても良くなることから、社長にとって地域戦略の研究は欠かせません。中でも販売係がお客の会社を定期的に巡回する訪問型の業種では、地域ごとの損益をはっきりつかむ「営業簿記」の実行が特別大事になります。
1.粗利益の65%~70%を占める営業経費
販売係がお客の所を定期的に訪問する訪問型業種の場合、仮に100万円の粗利益を作ったとしても、販売係の人件費を初めとして、販売係が使う車輛費、出張経費、販売促進費など、広い意味での「営業経費」に65万円~70万円も出ていきます。この事実は販売係も知らないでしょう。このあと内勤者の人件費や家賃、電話代、電気代、支払利息などを差し引くと、経常利益として残るのはわずか「7万円~8万円」になってしまいます。
2.原因は生産性マイナスの移動時間にある
営業経費が多くなっている原因は営業コストの高さにあります。年商10億円規模の場合、販売係の実質営業コストは税込み支給高の3倍になるので、支給額が500万円の人は1,500万円がほんとうの営業原価になります。1年間に2,000時間働くと、この人の時給は7,500円にもなります。社長の営業地域の決め方が悪いことが原因で、1日当たり1時間多く車に乗っていたら、1年間に約200万円の損がでます。もし同じ条件の販売係が10人いれば、1年間の損失は2,000万円になってしまいます。
3.陶山訥庵先生の究極の地域戦略
これに対して自社にとって有利な地域にお客を多く作り、お客占有率で1位になると移動時間が短くなるので営業経費が割安になります。割安になった分は経常利益の増加になります。1位の地域作りに役立つのが弱者の地域戦略で、中でも300年前に長崎県の対馬で8万頭の猪を全滅させた陶山訥庵の戦略がとても役立ちます。さらに営業地域ごとの採算をきちんと出す営業簿記を実行すると、販売係の利益意識が高まるので業績がよくなります。
陶山訥庵の地域戦略で強い地域を作れば経常利益が3倍に
第1章 経営の基本原則と市場占有率
- 儲からない中小企業の経営
- 利益性の原則を改めて押さえ直す
- 市場占有率の原則
- 1位の地域を作るとなぜ利益性が良くなるか
- 年商は同じでも営業地域の決め方で経常利益が変わる
- 意外に高い販売係の実質営業コスト
- 植物の勢力拡大と市場占有率
- 後発で差別化したツル科の植物
- グリーンベルトに同じ種類の植物を植える理由
第2章 実行手順とランチェスターの法則
- 実行の手順を改めてはっきりさせる
- 経営の目的と目標
- ランチェスター法則をマスターする
- 市場占有率の3大数値
第3章 強者の地域戦略と弱者の地域戦略
- A.強者の地域戦略
- B.弱者の地域戦略
- 地域戦略の目的は1位の地域作りにある
- 弱者は大きな会社を攻撃目標にしない
- 弱者は差別化に力を入れる
- 小規模1位主義・部分1位主義
- 弱者は地域を細分化して有利な地域を探す
- 弱者は営業地域を狭くして営業力の分散を避ける
- 弱者は弱い地域は切り捨てて強い地域をより強くする
- 重点地域には必勝の戦術力を投入する
- 大事な情報は競争相手に知られないようにする
- 弱者は調子に乗らない、小さな成功で生活を変えない
第4章 1位の地域作りと陶山訥庵の戦略
- 陶山訥庵の究極の地域戦略
- 遠大な計画を実行するリーダーの条件
- 重役のねたみにより突然役を降ろされる
- 1回当たりの取引高で変わる地域対策
- 陶山訥庵の戦略を応用した1位作りの対策
- 販売係の教育と訓練に力を入れる
- 重点地域はローラー調査をして見込み客を発見
- 1年に2回は移動時間を調査する
- 竹田陽一の体験談
- スーパーと事務機会社の成功事例
- 事務機販売会社の失敗例
- コカコーラの進出とサイダー会社の倒産
- 半径50kmから半径500kmに絞った不動産会社産
- 陶山訥庵の戦略を実行した住宅リフォーム会社
第5章 営業地域拡大の戦略対策
- 営業地域を拡大するときの戦略対策
- 郡部に本社がある場合
- 地方から東京や大阪に進出すると失敗率が高くなる
- a.大阪に進出して失敗した旧ユニード
- b.大分から東京に進出して失敗した食品会社
- c.大市場は弱者にとって鬼門
- 大都市から全国に出先を作るのも危険
- 地域戦略の実行には営業簿記が不可欠
- 損益分岐点の原理を応用した利益計画の限界